本当にゴルフは面白い。数多くのドラマが生まれます。
毎年行われる世界メジャー大会の四大大会の1つである全英オープン。先日行われたこの大会でもドラマが生まれました。
日本の新星石川 遼選手が世界のタイガー・ウッズと初日二日とラウンド。しかし、二日目の強風の影響を受けて予選落ち。更にまさかのタイガー・ウッズも予選落ち。まさに波乱含みで本選スタートとなった訳です。
この全英オープンは、世界トップクラスの選手でも攻略は困難を極めます。その最も大きな要因は、天候です。すぐにその風向きが変化する強烈な風と選手の体、スイングに多大な影響を及ぼすスコットランド特有の気候。その凄さは、実際にその場にいる人間しかわからないと言われる程。
だからこそ、優勝した者には多大な賞賛と名誉が与えられる訳です。今年もまた一人の勝者が現れたわけですが、そこにはまた1つのドラマが生まれました。
最終日最終ホールまで単独首位に立っていた59歳のトム・ワトソン。しかし、最終18ホールで痛恨のボギーを叩いてしまい、単独二位だった36歳のスチュワート・シンクとプレイオフ。
まさにその光景は、1977年にトム・ワトソンがジャック・ニクラウスとの「
真昼の決闘」と呼ばれた戦いを制した伝説の戦いが15年ぶりに現代に甦ったかのようだと述べる人もいました。この真昼の決闘とは、当時絶対的な王者であった帝王ジャック・ニクラウスを当時若手第一党だったトム・ワトソンが帝王を破り、見事世代交代を果たした戦いでした。
しかし、今回はトム・ワトソンがスチュワート・シンクに敗れ去りました。何とも言えない哀愁が漂うトム・ワトソンの表情が凄く印象的でした。対照的にメジャータイトルを手にしたスチュワート・シンクの喜びに満ち溢れた表情。一打の重み、そして勝負の厳しさがその瞬間出ていたように思えました。
勝負事に「
たられば」を言ったらキリがないけれど、トム・ワトソンが18番の2打目をグリーンオーバーしなければプレイオフになる事ないまま、それこそ間違いなくトム・ワトソンが優勝カップを手にしていたでしょう。彼の心境はわかりませんが、もしかすとあの瞬間のプレイバックが頭の中で何度となくよぎっていたのかもしれません。それ程、プレイオフの時のトム・ワトソンはそれまでの彼らしからぬプレイの連続でした。
ゴルフは、メンタルのスポーツだと言われますが、これは誠その通りだと思います。私のような者が言うのもなんですが、自分がプレイしていても1%不安に感じると結果は悪くなります。どこかでリズムが狂うんでしょうか。まさにプレイオフのトム・ワトソンはその悪いリズムの繰り返し。トム・ワトソンほどの名選手でも修正できない。これこそゴルフの恐ろしさであり、面白さなんでしょうね。
ただ、この勝負をずっと見ていた私を初めとするギャラリーの記憶に深く刻まれた事は間違いありません。世界最高峰の大会で世界最高峰の戦いを見せてくれた、トム・ワトソンとスチュワート・シンク、そして他の参加選手に感謝です。また来年の大会がこれで楽しみです。